感情は「喜怒哀楽」だけだろうか。いや、もう一人いる。「めんどくさい」だ。あまり一緒にいたくないのに、最も付き合う時間の長いメンドクサイ氏。「めんどくさい」を無くして行動するためには、やる気も、努力も、根性も必要ない。しつこい彼とスッキリ別れるためには、ちょっとしたコツが必要だ。
行動するのがめんどくさい
「会社に行くのがめんどくさい」「学校に行くのがめんどくさい」「朝起きるのがめんどくさい」など、めんどくさいには様々あるが、これらに共通するのが「行動するのがめんどくさい」ということだ。
蚊は汚い水たまりで発生するが、同じように「めんどくさい」も発生のメカニズムがある。そのきっかけは、「やらなきゃ」と思うことだ。
①「やらなきゃ」と思う
↓
②いろいろ考えてしまう
↓
③「めんどくさい」発生!
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「掃除をするのがめんどくさい」と考えている人は、「掃除をやらなきゃ」と、考えている。そして「どうせ掃除をしてもすぐ散らかるし」とか、「どうせ掃除をするなら、あれもこれもキレイにしなきゃ」といろいろ考えてしまって、めんどくさいという考えが強くなる。
だから、まずは「めんどくさい」の原因となっている①「やらなきゃ」を減らすことが第一だ。
「やらなきゃ」を減らす
やらなきゃ、ということを減らすためには、「自分は本当にこれをする必要があるのだろうか」と質問してみることだ。本当に必要なものを見つける手がかりは、こちらの記事で触れているので参考にしてほしい。
「やらなきゃ」を減らしても、やらなきゃいけないことは、まだ残っているはずだ。メンドクサイ氏はなかなかしつこい。
そこで次は、②「いろいろ考えてしまう」ところで敵を防ぐ作戦に変更する。
「いろいろ考えてしまう」をやめる
普段私たちは、意識的に考えている時と、なんとなく考えている時がある。意識的に考えて思慮を深めることは良いことだが、生活の大部分で経験するのは「なんとなくの思考」のほうだ。
ある研究結果によれば、人は1日に約6万回考えていて、そのうちの95%は前日と同じで、80%がネガティブな考えだという。これは心理学では「ネガティビティ・バイアス」といわれ、人はポジティブな言葉よりもネガティブな言葉のほうが記憶に残りやすい傾向があるのだという。
つまり、考えすぎるほど「めんどくさい」を引き当ててしまう可能性が高いのだ。ネガティブな考えはストレスを与え、その回復には膨大なエネルギーが必要になる。すると、さらに行動することがめんどくさくなる。
行動力の低い人は、ほとんどの場合、考えすぎる傾向がある。現代は情報過多の時代だから、考えすぎる人が多くなっている。
「考えない力」のトレーニング方法
では、「考えない力」を鍛えるにはどうしたら良いだろうか。本書では「ネーミング・ウォーク」という方法を紹介している。
これは文字通り「名前をつけながら歩く」という意味で、1人で歩いている時に、目に入るものに1つの単語で名前を付ける方法だ。電柱を見たら「電柱」でもいいし「ポペ」などの意味のない名前をつけてもいい。
ポイントは「あなたにとって特別な意味を持つ名前は付けないようにする」ことだ。思い浮かべるだけで腹の立つ人の名前をつけてしまうと、いろいろと考えが浮かんできてしまう。ネーミング・ウォークの目的は、頭を空っぽにして休ませることだ。
僕がこれを実際やってみたところ、なかなか楽しかった。要は先入観を持たないで物事を見るということなんだと思う。子どもの心で見るということでもあるかもしれない。考えすぎて頭が痛いときには、頭を休ませる目的で少し取り入れると良いと思う。
もう一つ、考えないための方法がある。「フロー」という概念だ。学者さんが名付けた概念だけど、分かりやすく言うと「夢中になる」ということだ。「今」に集中していて時間感覚や肉体感覚がない状態を言う。
スポーツでは似たような言葉に「ゾーン」というものがある。ゾーンに入ると驚異的なパフォーマンスを叩き出して相手を圧倒し、観客を驚かす。最近ではラグビーワールドカップの「日本vs南アフリカ戦」がこれに該当するだろう。
ラグビーのルールが分からなくてもすごさが伝わってくる試合だ。「日本なんかが勝てるわけがない」みんなそう思っていたし、ラグビーってのは下剋上が起こり得ないスポーツなんだけど、そういったネガティブ思考が一切ない、何かがハマっていた一戦だった。
こういう、過去を言い訳にするでもなく、未来を心配するわけでもない、今を集中する力ってのが必要なのだ。
人間関係がめんどくさい
「行動するのがめんどくさい」を退治する知恵を身につけて一安心、と思いきや、実はもう一人「メンドクサイ氏」は存在した。メンドクサイ氏は双子の兄弟だったのだ。兄弟の名は「人間関係がめんどくさい」
人間関係がめんどくさいと感じる場面は様々ある。「相手が言うことを聞かない」「相手からいろんなことを要求される」「相手に受け入れられない」「気の進まないイベントに参加しなければいけない」
これらに共通することは、「相手に合わせようとして、自分が無理をしていると感じる」ということだ。ありのままでないということだ。
重要なのは、「嫌いな人がいる時に、自分も相手も悪くない」ということだ。自分にも相手にもそれぞれのルールがあって、嫌いな人はあなたのルールを破っているだけである。
たとえば、日本人はミーティングの時に相手の話をさえぎるのは良くないと考えるが、アメリカ人は相手の話をさえぎってばかりだ。日本人はそんなアメリカ人を見て無遠慮だと思う。しかし、アメリカ人はミーティングに参加する意味は発言することだと思っているから、彼らは大人しい日本人を見て「ミーティングに貢献していない」と考えている。
こうしたすれ違いは、どちらが悪いというものではない。お互いのルールが違うだけだ。だから、大切なのは、自分のルールによって自分が苦しむかどうかだ。本書では、自分を苦しめるルールは手放すことが勧められている。ルールがないほど、人間関係はラクになる。
とは言っても、自分のルールは、過去の人生のどこかで役に立ったから自分で身につけたものだ。むやみに捨てられるものではない。そのルールが今も必要なものなのか、様々な角度で見直すことが必要だ。
「めんどくさい」がなくなる本
おわりに
僕も考えすぎて動けなくなってしまうタイプだったので、考えないトレーニングは必要だ。少し前から「鈍感力」とか「忘れる力」とかが流行っているが、うまく考えるべきこととそうでないことを分ける能力が必要なんだと思う。