尾張屋

悩まないための封印系呪文「昨日と明日のことは考えないことにする」

「今日、一日の区切りで生きよ」

戦後間もないころに書かれた本の冒頭の一節です。明日のこと、昨日のことをいつも心配してしまう私たちに勇気を与えてくれる言葉です。

こんな古い言葉が今なお有効であるということは、時代が激変したとしても人の心はあまり変わらないことを意味しています。

「心配」というのは文字通りいろんなことに心を配ることです。心はあっちにもこっちにも行きますが、体は一つしかありません。心だけ動いて体が動かない。どんどん心配だけが増えてしまって、悪ければ病気にもなってしまいます。

そんな時に必要なことは、流れ込んでくる考えを調節するということです。船は水が入り込んでくると沈んでしまいます。その調整をするのが防水壁です。そのように自分の人生という長い航海を安全確実なものとするために必要なことが、「一日の区切りで生きること」です。

ボタンを押してみなさい、そうすれば、諸君の生活のあらゆる部分で鉄の扉が過去ー息絶えた昨日ーを閉め出してゆく音が聞こえるでしょう。またもう一つのボタンを押して鉄のカーテンを動かし、未来ーまだ生まれていない明日ーを閉め出すのです。そうしてこそ、諸君は今日一日安泰です。(中略)エネルギーの消耗、心痛、神経衰弱は、未来のことを気づかう人に歩調を合わせて、つきまといます…そこで、前と後ろの大防水壁をピタリと閉ざし、『今日、一日の区切りで生きる』習慣を身につけるように心がけるべきでしょう。

このことは未来に対して何の準備もしないということではないと著者は言います。つまり、今日一日のことに集中することこそが明日を迎える準備になるのだということです。

戦後に書かれた本なので、本の中で挙げられる例には戦争に関することが多いです。戦争では、何が起こるかをいちいち心配している暇はありません。たとえ勝とうが負けようが、目の前の戦闘作戦に集中しなければならないし、過去に沈んだ戦艦について悔やんでいる場合ではありません。

今は戦争こそありませんが、過去にも勝るめまぐるしさの中にいる私たちにも響く言葉がたくさんあります。

君の人生を砂時計と考えてみるんだ。(中略)砂がゆっくりと、一定の速度で中央のくびれた部分を通過していく。(中略)君にしても、僕にしても、他の誰にしても、この砂時計そっくりなのさ。(中略)我々には1度に1つのことしかできないし、砂時計の砂がくびれた部分を通るように、ゆっくりと、一定の速度で仕事を片付けるしか手はない。さもないと、肉体や精神の働きが狂ってしまうのだ。

私たちは未来にも過去にも生きることはできません。私たちにできることは、現在を生きることだけです。