要約『人を動かす』デール・カーネギー著

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『人を動かす』を一言でまとめるなら、「相手に重要感を持たせて動いてもらう」ということになるだろう。

重要人物でありたいがゆえに、人は文明を興し、あるものはビジネスをし、あるものは慈善事業をし、あるものは犯罪を起こし、あるものは自分を傷つける。

こうした人間の行動原則を、ふんだんなエピソードを用いて紹介している。ここでは思い切ってエピソードを割愛し、読み返しやすいところまで凝縮した。

Part1.人を動かす三原則

1.盗人にも五分の理を認める

受刑者でさえ自分自身のことを悪人だと考えているものは、ほとんどいない。たいてい、自分の悪事にもっともらしい理屈をつけて正当化している。悪人でさえ自分が正しいと思い込んでいるとすれば、一般の人間は、自分のことをどう思っているのだろうか。

他人のあら探しは、なんの役にも立たない。相手は、すぐさま防御体制をしいて、なんとか自分を正当化しようとするだろう。それに、自尊心を傷つけられた相手は、結局、反抗心をおこすことになり、まことに危険である。

人を非難するかわりに、理解するように努めようではないか。

2.重要感を持たせる

人を動かす秘訣は、この世に、ただひとつしかない。すなわち、みずから動きたくなる気持ちを起こさせることだ。人を動かすには、相手のほしがっているものを与えるのが、唯一の方法である。

人は、何をほしがっているのか?欲求はたいていは満たすことが出来るものだが、ひとつだけ例外がある。「自己の重要感」がそれである。他人に認められることを渇望する気持ちである。ここで「渇望」としたことに注意されたい。

仮に家族に六日間も食物を与えないでおいたとすると、われわれは罪悪感を感じるだろう。それでいて、食物と同じくらいに誰もが渇望している心のこもった賛辞となると、六年間も与えないままほったらかしておくのだ。

お世辞と賛辞はどう違うか?前者は口から出るが、後者は心から出る。前者は利己的であり、後者は没我的である。

3.人の立場に身を置く

人を説得して何かやらせようと思えば、まず自分にたずねてみることだ。
「どうすれば、そうしたくなる気持ちを相手に起こさせることができるか?」
成功に秘訣というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。

Part2.人に好かれる六原則

1.誠実な関心を寄せる

友を得る達人に、われわれは毎日出会っている。こちらが近づくと尾をふりはじめる。なでてやると、夢中で好意を示す。犬は何か魂胆があって愛情表現をしているのではない。

ところが人間は、他人のことには関心を持たない。ひたすら自分のことに関心を持っているのだ。

アドラーはこう言っている。
「他人のことに関心を持たない人は、苦難の人生を歩まねばならず、他人に対しても大きな迷惑をかける」

『嫌われる勇気』を3読して要約。アドラーは人間関係に疲れたら学べ

われわれは、自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる。

2.笑顔を忘れない

動作は言葉よりも雄弁である。微笑はこう語る。
「わたしはあなたが好きです。あなたのおかげでわたしはとても楽しい。あなたにお目にかかってうれしい。」
犬が可愛がられるゆえんである。赤ちゃんの笑顔も同じ効果を持つ。

友人には笑顔を持って接し、握手には心を込める。誤解される心配などはせず、敵のことに心をわずらわさない。やりたいことをしっかりと心の中で決め、まっしぐらに目標に向かって突進する。すると、月日のたつにしたがって、念願を達成するのに必要な機会が自分の中に握られていることに気がつくだろう。

笑顔など見せる気にならないときは、無理にでも笑ってみせることだ。動作は感情にしたがって起こるように見えるが、実際は、動作と感情は並行するものなのである。感情は、動作を調節することによって、間接的に調節できる。

笑顔は元手がいらない。しかも、利益は無限大。与えても減らず、与えられたものは豊かになる。

3.名前を覚える

名前は、当人にとって、もっとも快い、もっとも大切なひびきを持つ言葉である。
人に好かれる一番簡単で、しかも大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだ。

4.聞き手にまわる

世間には、自分の話を聞いてもらいたいばかりに、医者を呼ぶ患者が大勢いる。

あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の百倍もの興味を、自分自身のことに対して持っている。中国で百万人の餓死する大飢饉が起こっても、当人にとっては、自分の歯痛のほうがはるかに重要な事件なのだ。

話上手になりたければ、聞き上手になることだ。

どんなほめことばにも惑わされない人間でも、自分の話に心を奪われた聞き手には惑わされる。

5.関心のありかを見ぬく

人の心をとらえる近道は、相手がもっとも深い関心を持っている問題を話題にすることだ。

セオドア・ルーズベルトは、相手が誰であろうと、その人に適した話題を豊富に持ち合わせていた。

相手しだいで成果も違うが、どんな相手と話をしても自分自身の人生が広がる、それが何よりの成果だ。

6.心からほめる

人は誰でも他人より何らかの点ですぐれていると思っている。だから、相手の心を確実に手に入れる方法は、相手が相手なりの世界で重要な人物であることを認め、そのことをうまく相手に悟らせることだ。

人間は、誰でも見えすいたお世辞は聞きたくないが、「心から認め、惜しみなくほめ」られたいと思っている。

では、それを、いつ、どこでやるか?いつでも、どこででも、やってみることだ。

人と話をするときは、その人自身のことを話題にせよ。そうすれば、相手は何時間でもこちらの話を聞いてくれる。

Part3.人を説得する十二原則

1.議論を避ける

議論に勝つ方法は、この世にただひとつしかない。その方法とは、議論を避けることである。

議論は、ほとんど例外なく、双方に、自説をますます正しいと確信させて終わるものだ。

仮に相手を徹底的にやっつけたとしても、それはむなしい勝利だ。相手の好意は勝ち取れないのだから。やっつけられた方は自尊心を傷つけられ、憤慨するだろう。議論に負けても、その人の意見は変わらない。

2.誤りを指摘しない

人を説得したければ、相手に気づかれないようにやることだ。教えないふりをして相手に教え、相手が知らないことは、忘れているのだといってやる。

人にものを教えることはできない。みずから気づく手助けができるだけだ。

相手が間違っているときには、こんなぐあいに切りだすのがいい。
「おそらくわたしの間違いでしょう。わたしはよくまちがいます。ひとつ事実をよく考えてみましょう。」
この文句には、不思議なほどの効き目がある。

われわれは、あまり抵抗を感じないで自分の考えを変える場合がある。ところが、人から誤りを指摘されると意地を張る。この場合、われわれが重視しているのは、明らかに、自分の考えそのものではなく、危機にひんした自尊心なのである。

3.誤りを認める

自分に誤りがあるとわかれば、相手のいうことをさきに自分でいってしまうのだ。そうすれば、相手には何も言うことがなくなる。十中八九まで、相手は寛大になり、こちらの誤りを許す態度に出るだろう。

4.おだやかに話す

相手の心が反抗と憎悪に満ちているときは、いかに理を尽くしても説得することはできない。もし相手を自分の意見に賛成させたければ、まず諸君が彼の味方だとわからせることだ。これこそ、相手の理性に訴える最善の方法である。

5.「イエス」と答えられる問題を選ぶ

人と話をするとき、意見の異なる問題をはじめに取り上げてはならない。まず、意見が一致している問題からはじめ、それを絶えず強調しながら話を進める。互いに同一の目的に向かって努力しているのだということを、相手に理解させるようにし、違いはただその方法だけだと強調するのである。

相手にいったん「ノー」と言わせると、それを引っ込めさせるのは容易ではない。それは自尊心が許さないからだ。

6.しゃべらせる

相手を説得しようとして、自分ばかりしゃべる人がいる。しかし、相手が言いたいことをまだ持っている限り、こちらが何を言っても無駄だ。大きな気持ちで辛抱強く、しかも、誠意を持って聞いてやる。

7.思いつかせる

人から押し付けられた意見よりも、自分で思いついた意見のほうを、われわれは、はるかに大切にするものである。命令されている感じは、だれにしろいやなものだ。

それよりも、自主的に行動しているのだという感じの方が、はるかに好ましい。

すると、人に意見を押し付けようとするのは、そもそも間違いだといえる。暗示を与えて、結論は相手にださせる方が、よほど利口だ。

老子「海が数しれぬ渓流のそそぐところとなるのは、身を低きに置くからである。同様に、賢者は、人の上に立たんと欲すれば、人の下に身を置く。」

8.人の身になる

非難は、どんな馬鹿者でもできる。賢明な人は、相手を理解しようとつとめる。相手の考え、行動には、相当の理由があるはずだ。その理由を探し出さねばならない。

相手の身になって考えてみることだ。
「もし自分が相手だったら、どう感じ、どう反応するだろうか」

9.同情を持つ

人間は一般に、同情をほしがる。子どもは傷口を見せたがる。ときには同情を求めたいばかりに、自分から傷をつけることさえある。大人も同様だ。傷口を見せ、災難や病気の話をする。不幸な自分に対して自己憐憫を感じたい気持ちは、誰にでもあるのだ。

10.美しい心情に呼びかける

人間は誰でも理想主義的な傾向を持ち、心の行為については、美しく潤色された理由をつけたがる。そこで、相手の考えを変えるには、この美しい理由をつけたがる気持ちに訴えるのが有効だ。

たとえば、人間は誰でも正直で、義務を果たしたいと思っている。人をごまかすような人間でも、正直で公正な人物として扱われると、なかなか不正なことはできないものなのだ。

11.演出を考える

現代は演出の時代である。単に事実を述べるだけでは十分ではない。事実に動きを与え、興味をそえて演出しなければならない。人の注意を引くには、これによるのが何よりも有効だ。

たとえば、広告はすべて商品の利点をドラマチックに演出したもので、それによって視聴者に商品を買わせている。また、愛の告白をする男性は、ロマンチックな雰囲気作りを心がける。

12.対抗意識を刺激する

成功者はみなゲームが好きだ。自己実現の機会が与えられるからだ。優位を占めたい欲求、重要感を得たい願望、これを刺激するのだ。

Part4.人を変える九原則

1.まずほめる

まず相手をほめておくのは、歯科医がまず局部麻酔をするのによく似ている。もちろん、あとでガリガリやられるが、麻酔はその痛みを消してくれる。

2.遠まわしに注意を与える

人の気持ちや態度を変えようとする場合、ほんのひとことのちがいが、成功と失敗の分かれ目になることがある。

人を批判する際、まずほめておいて、つぎに「しかし」という言葉をはさんで、批判的なことを言い始める人が多い。たとえば、子供に勉強をさせようとする場合はこうだ。

「お父さんもお母さんも、お前の成績があがってほんとうに鼻が高いよ。しかし、代数をもっと勉強していたら、成績はもっとあがったと思うよ。」

これでは、はじめのほめ言葉が本心だったのか疑いたくなる。信頼感が鈍り、勉強に対する子どもの態度を変えることに失敗する。

この失敗は、「しかし」を「そして」に変えると、すぐに成功に転じる。

「お父さんもお母さんも、お前の成績があがってほんとうに鼻が高いよ。そして、来学期も同じように勉強を続ければ、代数だってほかの科目と同じように成績が上がると思うよ。」

遠まわしに注意を与える方法は、直接批判されることに強く反発する神経質な人たちには、驚くほど効果がある。

3.自分のあやまちを話す

まず自分の誤りを話したあと相手に注意する。

人に小言をいう場合、謙虚な態度で、自分は決して完全ではなく、失敗も多いがと前置きして、それからまちがいを注意してやると、相手はそれほど不愉快な思いをせずにすむものだ。

4.命令をしない

たとえば不法駐車を見つけて、「車をどけろ!」と押しつけがましい命令をするのは、あとにしこりを残す。

この場合、「あの車をのけてくれたら、ほかの車の出入りが楽になるのだが、どうだろう?」と命令を質問の形に変えると、気持ちよく受け入れられるばかりか、相手に創造性を発揮させることもある。

命令が出される過程に何らかの形で参画すれば、だれでもその命令を守る気になる。

5.顔をつぶさない

大切なことは、相手をわたしがどう評価するかではなくて、相手が自分自身をどう評価するかである。相手の人間としての尊厳を傷つけることは犯罪なのだ。

6.わずかなことでもほめる

犬が少しでもうまくできると、大げさに褒めてやる。動物の訓練には、むかしからこの手を用いている。われわれは、このわかりきった方法を、なぜ人間に応用しないのだろう。

批判によって人間の能力はしぼみ、励ましによって花開く。

重ねていうが、本書の原則は、それが心の底から出る場合にかぎって効果を上げる。小手先の社交術を説いているのではない。

7.期待をかける

相手をある点において矯正したいと思えば、その点について彼はすでに人よりも長じていると言ってやることだ。相手に美点を発揮させたければ、彼がその美点をそなえていることにして、公然とそのように扱ってやるがよい。良い評判を立ててやると、その人間はあなたの期待を裏切らないようにつとめるだろう。

8.激励する

相手をののしるのは向上心の芽を摘み取ってしまうことになる。その逆を行くのだ。大いに元気づけて、やりさえすれば容易にやれると思い込ませ、相手の能力をこちらは信じているのだと知らせてやるのだ。そうすれば相手は、自分の優秀さを示そうと懸命にがんばる。

9.喜んで協力させる

相手の身になれ。相手の真の望みは何か?あなたに協力すれば相手にどんな利益があるか?望みどおりの利益を相手に与えよ。人にものをたのむ場合、そのたのみが相手の利益にもなると気づくように話せ。

付:幸福な家庭をつくる七原則

1.口やかましくいわない

小言や怒りは人を変えるだろうか?変わることは事実だ。相手は結婚を後悔し、できるだけ顔を合わせないようにつとめる。

2.長所を認める

相手が完全ではなくても、長所を十分に伸ばしてやるだけの賢明さを持つことだ。

3.あら探しをしない

新婚の夢が破れる原因の一つは、あら探しをすることである。

4.ほめる

フランスの上流社会では、男性は婦人の服装について1日に何度もほめるものと、子どもの頃から教えられている。まことに賢明な知恵である。

5.ささやかな心づくしを怠らない

家庭不和の原因の大部分は、きわめてささいなことである。夫が出勤するときに、妻が手を振って見送りさえすれば、回避できるような問題がいくらもある。

6.礼儀を守る

無作法は愛情を破壊するガンだ。それくらいのことは、誰でも知っているはずだが、とかく、家のものに対しては、知らない人に対する場合よりも無作法にふるまう。

礼儀は、いわば結婚生活の潤滑油である。

7.正しい性の知識を持つ

性的に無知な人間が非常に多いという。

結婚における性生活の均衡は、非常にむずかしい問題であるにもかかわらず、たいていの場合、成行きにまかされている。

幸福な結婚は、成行きにまかせたのでは、とても望めない。賢明に、慎重に計画されて、はじめてそれを築きあげることができる。

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