日本には風刺の文化がないから若者が政治に関心を持たないという仮説と、風刺の代替え案

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

日本の若者は政治に対する関心が低いといいます。

投票率を見ても、選挙に行くのはおじさんおばさんばかりなので、政治家はおじさんおばさん向けの政策を打った方が選挙で当選しやすいと考えています。

そうするとさらに若者の政治に対する関心が薄れる。このような悪循環があります。

欧米では若者の政治に対する関心が比較的高いです。スウェーデンでは30歳以下の投票率が80%を超えます。

昨年のイギリスの国民投票では、EU残留を望む多くの若者が選挙に行かなかったことが問題視されていました。しかしこれは選挙に行く手続きが煩雑であったこと、また選挙当日に大きなイベントが重なったことが原因の一つのようで、政治への無関心とはまた別の問題です。

投票は登録制となっており、申請に必要な情報の不備などが原因で、多くの若者が登録を断念してしまったと米公共ラジオネットワーク「NPR」は説明する。加えて、投票日の23日は、コールドプレイ、ミューズ、アデルが登場し、18万人の観客を集めるグラストンベリー・ミュージック・フェスティバルや、30万人から50万人のイギリス人が集まるとされるサッカーの欧州選手権と重なる。当日投票できない場合は郵送または代理人による投票となり、手続きが面倒なことから、登録を済ませていても、投票所に足を運ばない若者が増える可能性もあるとNYTは見ている。

こうした状況と比べて、日本の若者は「そもそも政治に興味がない、よくわからない。」という人が多い印象があります。

なぜこのような違いが出てくるのか。

いろいろ考えた結果、風刺の文化のあるなしが関係しているのではないかという仮説を立てました。

権力者を風刺する文化を持つ国は多いです。権力者がやっていることを、わかりやすくバカバカしく表現して笑うという文化があります。風刺は面白いことに加え、難解な政策がわかりやすくなるという側面もあります。

政治家はわかりにくい言葉を使って仕事をしていますが、それをもじった絵を一つ見せられると「そういうことなの?このままでいいのか?いや、そもそもこの風刺は合っているのか?」などと政治に対する関心と、風刺画というメディアに対するリテラシーが鍛えられる効果があります。

しかし日本にはそれがありません。風刺画は一部の経済史などに小さく載っていることがありますが、それほど大きく取り上げられているわけではありません。

風刺の文化がないことで、政治に対する関心が持てないばかりか、情報に対する審美眼が鍛えられず、流れてくる情報をむやみに信じてしまうといった問題も起こっています。

「情報が不正確」だとして昨年閉鎖になった健康情報サイト『WelQ』は毎月600万人がその情報を見て参考にしていました。また、風刺とイジメの線引きが曖昧になり、マスコミが社会的弱者を叩くといった問題も起こりました。

では日本にも風刺の文化を取り入れられるかといったら、それは難しいです。

なぜなら、日本人の多くは風刺画が嫌いだからです。なにせカワイくないし、むしろシュールすぎてキモい。中途半端にデフォルメするくらいなら完全にアニメの世界に入った方がいい。

おそらくこんな理由が挙げられるのではないかと思います。日本人はカワイくないものは受け入れません。女子ですから。

だから日本には風刺が入り込む余地はありません。

しかし、政治をわかりやすくする手段は他にもあると思っています。

日本人は昔から、外国のものを日本流にアレンジして使うという文化があります。カレーもラーメンも日本語も、海外のものを日本風にアレンジしたものです。日本にフィットする形に変えてしまうんです。

つまり、風刺も日本風にアレンジできないかということです。

では、何をもって風刺を日本風にアレンジして取り入れ、政治をもっとわかりやすくできるでしょうか。

一つは、ジャーナリストの池上彰さんがやっているような「わかりやすい解説」をすることです。あれは風刺ではありませんが、難しい問題を可愛らしい人の形をしたコマとジオラマで再現するので、素人でも政治問題に興味が持てます。

もう一つは、日本特有の文化「イジる」文化を使うことです。日本には風刺はありませんが「いじり」はあります。

日本人には、政治家に対して神のように崇める人と、悪魔のように思って叩く人と、空気のように無視する人はいますが、ゆるい接し方をする人がもっと必要なのではないでしょうか。もっと政治家をいじったらいいのではないでしょうかね。

お笑いコンビの『爆笑問題』や『ナイツ』は政治ネタが多いです。本来は深刻になってしまう社会問題を笑いに変えてしまうのがうまいです。日本の笑いの根本は、風刺ではなく“ボケとツッコミ”なんですよね。

政治家は難しいことをやっているようで、その核心は「国を豊かにしたい」ということだけです。だから政治家のやっていることをわかりやすく「ボケ」にアレンジすることができれば、若者もツッコミを入れたくなって政治に関心を持つようになるのではないでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*