自分の意見を伝えるのにこれほど的確でシンプルな表現があったとは。
プロジェクト炎上を防ぐ魔法のアイテム、100徳ナイフを買ったお話2 / fladdict
このブログの管理人さんはiphoneアプリデザイナー。日々お客さんから「こういうアプリ作りたいんだけど」という注文を受け付けてそれを製品化していらっしゃいます。
こうしたシステム屋さんにあるあるな悩みというのが、お客さんのわがまま注文です。
特にシステムに詳しくない人は平気で無茶な注文をしてくるらしいです。
「こういう機能も付けたい」
「ここにこういうのがあるといいんだけど」
お客さんの要望を聞いて頑張って作っていると途中で、
「やっぱこれも加えてくれない?」
「え?追加の料金が必要なの?ちょっとしたことだからタダで出来るでしょ。」
こうして取引は炎上し、お客さんのあれもほしいこれもほしいというおねだりに振り回され、システム屋さんは往々にしてその仕事がデスマーチに陥るといいます。お客さんの理不尽な仕打ちにやるせなくなったSEさんがヤケクソでこんな動画を作ってしまうほどです。
私の会社でも社内でツールを作って作業の効率化を図っています。
ツールを手に入れたときは感動してシステム開発者を神のようにあがめるのですが、使っているうちにだんだん慣れが生じてきて、
「ここ、もっとこうならないかな」
「ここがこうなると最高なんだけどなあ」
というわがままがどんどん湧いて出てくるんですね。
私はシステムに関しては全くの無知なのでシステムの製作にどれだけ苦労がかかるかがわからず、過去に無茶な依頼をしてしまったこともあります。
システム製作者としては無駄な作業はしたくない。何件もシステムを開発している経験から必要な機能と必要ではない機能の相場がわかっている。しかしそれを説明するのが難しいといいます。お客さんに「この機能いりませんよ」と直接的に言うのではかどが立ちます。
そこでこのブログの管理人さんが考えた解決策が、自慢の100徳ナイフを見せること。
このたった一動作をするだけで、お客さんは自分がいかに無駄な注文をしてきたかを即座に理解するといいます。
たしかに、現物を見せられたら誰もがこう思うでしょう。
「見える化」「比喩」「エピソード」の合わせ技で相手を説得する
言葉で説明しても伝わらないことが、100徳ナイフを見せるだけで解決する仕組みを分解してみると、このナイフには「問題の見える化」と「比喩」が含まれていることがわかります。
「見える化」はトヨタが初めて使い出した言葉で、複雑な問題を一目で見て分かるようにまとめることでわかりやすくする効果があります。
http://shinyaowari.com/情報整理
また「比喩」も物事をわかりやすくする効果があります。いくらシステムに疎い人でも100徳ナイフがいかに無駄かはわかる。盛り沢山なシステムは100徳ナイフのようなものだ。これが頭の中でリンクした時に「はっ」とインスパイアされるんですね。
そしてさらにこの「見える化」と「比喩」を「エピソード」を通して遠まわしに説明することでお客さんにスムーズに理解してもらえるようになります。
もし直接的に、
「あなたの言っていることはね、この100徳ナイフと同じで無駄なことなんだよ!」
と言ってしまうと相手の態度は硬直化しかねません。
「なに!俺はお客様だぞ!やれといったらやれ!」
となってしまいます。
そうではなくて、
「私は100徳ナイフコレクターでして。」
という前振りで何気なくナイフを取り出す。
するとお客さんの耳にどこからともなく声が聞こえてくるわけです。
お客さんが100徳ナイフをじっと見ていると、だんだんとそれが自分たちの作ろうとしているシステムとダブって見えます。
たまらず相手は降参してしまうというわけですね。
説得の手法が美しすぎます。こういう話すごい好き。