ウェブの世界はアイデアがすべて。枯れないアイデアのつくり方。

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ウェブの世界はアイデア次第。よく「アイデアがいいだけで実現可能性がないものは…」と言われるが、ウェブの世界は考えが命だ。良い案さえ浮かべば、それを実行するのはリアルと比べたら段違いに楽だ。

しかし、そのアイデアが浮かばないからみんな苦労してる。いつも面白いアイデアを思いつく人がいるが、彼らの頭の中はどうなっているのか。いきなりアイデアが降って湧くのはなぜなのか?彼らが選ばれし戦士だからなのか?

しかし、そうではなかった。アイデアは、車を作るように、その作成工程が決まっている。その過程を知り、訓練することで、誰でも画期的な案を生み出すことができる。


日本人は世界的に見ても真面目な民族だと言われる。学校の勉強が終わったあとにちゃんと塾に行くし、夜遅くまで仕事をしている。平均睡眠時間は世界トップレベルの短さだし、アメリカ人のように夏休みを一ヶ月も取るなんてことはまずない。

真面目さが美徳とされている私たちだけど、時に面白みがないように語られることもある。ユーモアとかインスピレーションという言葉は、日本人より欧米人に相応しいように思える。

1.アイデアの定義

しかし、本当に日本人はクリエイティビティが苦手なのだろうか。クリエイティブの定義を知ると、少し考え方が変わってくる。

この本の核心は、以下の一言だ。

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。

だとすれば、日本はいろんなものを組み合わせて独自の文化を作っているのだから、クリエイティブだということになるのかもしれない。

先日、父と「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を観に行った。スターウォーズはSFだけど、作品に出てくる惑星やキャラクターは現実の世界の何かをモチーフにしている。「フォースの覚醒」では、日本の「高田馬場」から名前をつけた惑星があるという。

日本の文化は映画の題材になるほど独特なものだということを、映画の帰り道に、海外旅行好きの父から聞いた。スターウォーズの世界観も、ジョージ・ルーカスがゼロから作り出したものではなくて、すでにあるものを組み合わせたものなのだ。

アイデアをこうした科学的なものと捉えることは、特に企画、広告の仕事をする人たちにとっては当たり前のことらしい。

以前ブログで取り上げた「伝え方が9割」も「広告を設計する」という立場で語られた本だった。

伝え方が9割。相手に「OK」をもらう誘い方。

だから、彼らは新しい企画を練る時、「いかに既存の情報を収集するか」と「集めた一つ一つの情報の関連性をいかに見つけるか」に注力する。そうすれば新しいアイデアが生まれるからだ。

2.アイデアのつくり方

アイデアを作るには5つの段階を経る必要がある。

・情報を収集する
・集めた情報の関連性を探す
・何もしない
・勝手にアイデアがひらめく
・世に出す

各段階は、必ず上から下にたどっていかなければならない。順番を変えるとか、抜かすことはできない。

2-1.情報を収集する

できるだけ多くの情報を収集することだ。これはただなんとなくネットサーフィンをすることとは違う。本書ではスクラップブックを作って情報をまとめることが勧められている。この本が出版された当時はスマホがなかったが、今は新聞を切り抜かないでもメモアプリにコピペしてタグで分類しておけば、大量の情報を場所をとらずに保存しておける。

2-1-1.一般情報を集める

集めるべき情報は、「なんでもかんでも」だ。集めた情報の中から、関連性が見つかり新しいアイデアの種が生まれるかもしれないからだ。

広告マンは、この世には興味の持てないものは何一つない、というくらい情報収集に貪欲らしい。それこそモダンアートからエジプトの埋葬習慣まで、なんでもだ。

2-1-2.特殊情報を集める

また、アイデアを誰に公開するのか、その対象の情報も必要だ。アイデアが生まれたとして、それを公開しなければアイデアは存在しないと同じだからだ。広告の場合は「商品そのものの情報」も必要になってくる。

たとえば、アップルのティム・クックさんがiPhoneの新しいアイデアを思いついたとして、そのアイデアを既存のiPhoneユーザーに説明するのか、またはガラケーを使っている人に説明するのかでは全く異なるアプローチが必要になる。

本書では、アイデアを公開する相手を知ることについて、このように語っている。

一人のタクシー運転手をつかまえることだ。その男にはどの運転手ともちがったところなどないように君にはみえる。しかし君の描写によって、この男がこの世界中の他のどの運転手ともちがった一人の独自の人物にみえるようになるまで、君はこの男を研究しなければいけない。

情報の収集は、半ばは当面のアイデアを出すために、半ばは一生続けることが必要な雑仕事である。

2-2.集めた情報の関連性を探す

集めた知識はそのままでは新しいアイデアにはならない。バラバラな情報の関連性を見つけていく。これはパズルのピースを組み合わせる作業であり、バラバラに集まった宝石で模様を作る、万華鏡のような働きだ。

一つの広告を構成するということはつまり私たちが住んでいるこの万華鏡的世界に一つの新しいパターンを構成するということである。

一見するとバラバラに思える個々の情報を、組み合わせることで今までになかった新しいパターンを作るのがアイデアだ。思考錯誤しているうちに浮かんだ小さなアイデアの種は、またメモしておく。

2-3.何もしない

「情報収集」と「関連性を見つけ出す作業」は自力で頑張ってやらなければならない。

しかし、これをやっているうちに気がつく。「キリがない」と。情報を集めるのもキリがないし、組み合わせを見つけるったっていつでも簡単に見つかるわけではない。頑張って関連性を探し続けるうち、やがてパズルを見るのも嫌になる。すべての情報がごっちゃになって収集がつかなくなる。パズルをはじめたばかりのころは、あんなにすぐにピースが見つかったのに・・・まるで「魔女の宅急便」で、キキがほうきで飛べなくなり、ジジの言葉がわからなくなってスランプに陥るあの瞬間のようだ。そしたらキキにアドバイスをした、ウルスラのあの言葉が非常に有効だ。

ウルスラ「魔法も絵も似てるんだね。私も よく描けなくなるよ。」

キキ「ほんと!? そういう時どうするの?」

ウルスラ「ダメだよ、こっち見ちゃ。」

キキ「私、前は何も考えなくても飛べたの。でも今は分からなくなっちゃった。」

ウルスラ「そういう時はジタバタするしかないよ。描いて、描いて、描きまくる。」

キキ「でもやっぱり飛べなかったら?」

ウルスラ「散歩したり 景色を見たり…昼寝したり 何もしない。そのうちに急に描きたくなるんだよ。

キキ「なるかしら…」

ウルスラ「なるさ!さあ、ホラ、横むいて!」

引用:魔女の宅急便

これは「今まで左脳で考えていたものを右脳に移す」工程だという。意識的に考えていたことを無意識の領域に移すということだ。

本書では例として、推理小説のシャーロック・ホームズが挙げられている。ホームズは事件に取り組んでいるさなか、しょっちゅうワトソンを音楽会に誘ってワトソンをやきもきさせるのだが、それは作者のコナン・ドイルがアイデアの作り方を熟知していたから、キャラクターにもこのような行動をさせたのだろうと、本の著者は述べている。

魔女の宅急便における、キキがウルスラに相談するシーンも、きっと宮崎駿監督の実体験にもとづいて作られたものだろう。

2-4.勝手にアイデアがひらめく

アイデアは思いもよらない時に、ヒゲを剃っている時とか、トイレに入る時に、唐突にやってくる。

ある日、アルキメデスが風呂に入ったところ、水が湯船からあふれるのを見て、その瞬間、アルキメデスの原理のヒントを発見したと言われる。このとき、浴場から飛び出たアルキメデスは「ヘウレーカ!ヘウレーカ!」(分かったぞ)と叫びながら裸で走っていったという伝説が残っている。

引用:Wikipedia

情報を集め、情報同士の関連性を探し尽くして、そうして咀嚼された情報が無意識の中で勝手に消化された後、ついにアイデアは生まれる。

何もしてなかった人が突然新しいアイデアを見つけるように思えるのは、その人がそれまでに大変な思いをして情報収集と情報を組み合わせる過程をこなしてきたからだ。

2-5.世に出す

生まれたばかりのアイデアを世に出す工程だ。すると大抵、思いついた時に感じたほど素敵なアイデアではないことがわかる。

アイデアを、世知辛い世の中に耐えうるものにするためにブラッシュアップしていかなければならない。反対意見がでてくるかもしれないし、実現するためにお金が必要かもしれないし、法律の問題もあるかもしれない。もしかしたら、アイデアが先進的すぎて時代がついていけないかもしれない。

しかし、素晴らしいアイデアは、アイデア自体で成長する能力を持っている。アイデアを知った人がその成長に手を貸してくれるからだ。たとえばwikipediaの記事は誰が何を言わないでもどんどん記事がブラッシュアップされていくし、プログラムの世界には不特定多数の人が開発に関わる「オープンソース」というものもある。最近はアイデアを出して資金を募る「クラウドファンディング」というものも話題だ。

以上が、アイデアの作られる全過程ないし方法である。

おわりに

アイデアを生み出すために必要な工程は以下の5つだ。

1.情報を収集する
2.集めた情報の関連性を探す
3.何もしない
4.勝手にアイデアがひらめく
5.世に出す

これからAIがどんどん賢くなると、今人間がしている仕事の多くは機械に奪われるだろうと言われている。車の運転も、会社の会計処理も、デートさえ出来てしまう。そんな未来への挑戦が、世界中で日々研究されているのだ。

しかし、いまだに機械には創作ができないし、無意識という領域においては人間自身、よくわかっていない。「何もしない」という工程を機械ができるようになる未来はまだまだ来ない。

創作。これが、これから人間がすべき仕事ではないだろうか。

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