『コンビニ人間』を読んで「バイトの経験を小説にできるってすごくね?」と思った話

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母親から借りた芥川賞受賞小説『コンビニ人間』を読みました。

いろいろ面白いところがありましたが、読みどころの一つはもちろんコンビニバイトが克明に記録されているところ。これはコンビニが好きになる小説ですね。コンビニの見方が変わると思います。アルバイト視点で話が進んでいくので、コンビニひいてはサービス業の内情を垣間見ることができます。

だからコンビニや喫茶店、飲み屋などで働く人の気持ちが少しわかる、そんな小説です。2時間くらいで読めます。

コンビニって場所によって少しずつ雰囲気が違います。って思ってるのは私だけかもしれませんが。

置いてある商品はほとんど同じですが少しずつ違う。ビジネス街のコンビニと住宅街のコンビニでは少し異なります。

違いは商品だけではなくて、雰囲気も違います。雰囲気は主に働いている人が作っているものなので、どういう人が働いているかで買い物のしやすさが異なります。と感じてるのは私だけか。私は全然違うと思ってます。いつか「オススメのファミマ10選!」とかやりたいほど。

私は喫茶店も内装よりは店員や客層で選んでしまう人で、よく店に入ってぐるっと一回りしてそのまま出てきてしまう、ということをします。防犯カメラに映っている映像はかなり不審だと思いますが、喫茶店に寄る理由はお茶飲むためというより雰囲気を楽しむものだから。それをコンビニにも求めるのはやりすぎかもしれませんが。

いろんなコンビニがあります。

一番良かったのは店長とアルバイトが仲の良いコンビニ。楽しそうに働いているので客としてもいやすいです。

逆に気分悪くなるのは店員の機嫌が悪いコンビニ。言葉遣いは丁寧なのにバーコードリーダーをガンッ!レジをガンッ!てやる奴がいるんですよね。だからこっちもカッときて、小銭をバンッと置いてレシートをビリッと破ります。すると周りのお客さんがリズムに合わせて商品をダンッ!冷蔵庫の扉をバタン!どこからともなく楽器を持った人たちが集まってきてステキなフラッシュモブが繰り広げられます。

心配になるのが夜中に行くとすっごい辛そうなにいちゃんが接客してくれるコンビニ。ものすごいオーラを放ってて、いつ行ってもバックヤードから現れて「…いらっしゃいませ…」というマニュアル無視の接客は、もしや役者なのかと思うほど。彼にはコンビニより楽で給料高い仕事あるよって教えたくなります。

困るのが店員がすぐにテンパるコンビニ。バーコード読み取れないと焦って「申し訳ございません!申し訳ございません!」といいながら商品をつぶさんばかりにリーダーを押し付けます。いや、後ろに人も並んでないしゆっくりでいいから。

焦ったのが日本語堪能な留学生が働いてるコンビニ。お惣菜を買うと「お箸は一膳でよろしいでしょうか。」と完璧な日本語で対応してくれます。それにびっくりして私が「お箸の方は一個で、いいっす。」といった反応を返すもんだから、どちらが日本人かわからない。

コンビニにもいろんな人間模様がありますね。

ピース又吉さんの『火花』もそうでしたが、これは著者の村田さん自身の経験をもとに書かれた小説です。

コンビニ店員はたくさんいますが、その体験を芸術に作り変えて別の分野で応用してしまうところがすごいですね。

これはただ働いているだけでは思いつかないことで、働きながら小説の構想を練っていないとできません。

なんでもない風景が、見方を変えると意味深いものに見えるという話を以下の記事でもしましたが、やっぱり大事なのは「どう感じるか」の部分です。

http://shinyaowari.com/difference-in-th…ney-and-richness

感じ方次第で、「生活のためにやっているだけのめんどくさいバイト」にもなるし、小説にもなるのだということです。

コンビニでの体験を小説にしたものが多くの人に読まれて、読んだ人がまた感じたことを別の人にシェアしていく。そうして知識は形を変えながら人々の中を回っていくんですね。

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