モノが素晴らしい体験を生むのではなくて、体験の中にモノが存在するのがこれからのビジネス

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デパートが販売力の低下にあえいでいます。地元の千葉の三越もついに閉店です。今は人々の価値観が千差万別で、デパートのように大量に仕入れて大量に売る手法が通じなくなってきていると言われています。

昔はサイズが合わない服でも買われていたのだとか。日本が消費に意欲的だった時代ですね。物を持つことがその人のステータスになっていた時代でした。

みんなと同じものを持って、みんなと同じ場所に旅行に行って、みんなと同じテレビを見る。そうして一体感を得ていた時代がありました。

私が以前勤めていた会社の会長夫人も、そうした価値観が変わってしまったことをいつもぼやいていました。

よくオフィスに顔を出す会長夫人で、雑談の中でテレビ番組の話題をするんです。なのに誰も見ていないもんだから「昔はみんな同じテレビを見ていたんだけどねえ。」とブツブツ言っていました。

今は価値観が様々です。何かを買うにしても昔は「高くて良いもの」だったのが「より安く、でも自分にぴったりなもの」を探す風潮があります。

だから消費が下火になっていると言われて久しいですが、これはモノに興味がなくなったと言うことではありません。

今はものの売れ方が俗人化してきているということです。良いものを作れば売れた時代は過去のもの。今はどう売るかが大事な時代です。この言葉は1950年にすでにデールカーネギーが言っていることですが。

今まで、物を売ることはマスコミが担ってきましたが、今はより人にフォーカスされてきています。昔は「みんなで同じ服を着て同じ場所に行く」ことが人間の集団帰属意識を満足させましたが、今は「あの人と同じ物を着てあの人が行ったところに行く」という、モノから人、そしてその人に伴う体験へのシフトが起きています。

ドラマや映画の舞台になった場所へ行く“聖地巡礼”はその最たる現象です。またヒカキンとかはじめしゃちょーといった有名人が商品を紹介すればそれが売れる。彼らにはメーカーから動画作成のオファーが来ます。モノより人のほうが価値を持っているということです。

思い出の中にモノがあるというのが今の流れです。有名どころではレッドブル。レッドブル自体はどこにでもある清涼飲料水です。私は時々レッドブルの成分表を見ながら「アルギニンサプリ飲んだ方が圧倒的にコスパ良くね?」と思ってしまうことがあります。

しかしレッドブルの魅力は商品のスペックとしての魅力だけでなく、会社が様々なイベントを打ち出すことで「体験」の中に商品がポジションを持っているところにあります。

中身はリポビタンDと同じです。しかしレッドブルには物語があります。レッドブルを飲むことで、動画のような非日常を追体験することができます。

昔から営業の世界では「お客様は何を買うかではなくて誰から買うかで決める」といわれていました。この話は営業マンだけが意識していればよい話でしたが、SNSが一般化して誰でも発言をしスモールビジネスができる時代になった今では、かつて一部の人にしか該当しなかったセールスの基本は誰にでも該当するようになってきました。

月500万円を売り上げる配信者も。生配信アプリ「SHOWROOM」 が語る、第三世代のエンタメビジネスと、人気と認知の高さがベツモノである理由。

この記事では、同じ商品を有名人が紹介した場合と人気配信者が紹介した場合とで購買率の違いを紹介しています。

実験の結果、誰でも知っているような有名人が紹介した時にはわずかしか売れなかったものが、自分がファンになっている人が紹介した場合には何倍も買われたのです。以前から口コミが最強のマーケティングであると言われていましたが、それがいよいよ顕在化してきたということではないでしょうか。

誰が売るかが大事だというのはどういうキャラクターで売るのかが大事だということです。販売者の人柄や思想を知ったうえで購入者は商品を買うということです。統一したメッセージが読者をひきつけるというのはセレクトショップの人気ぶりを見てもわかります。セレクトショップは商品を売っているのではなくコンセプトを売っているからです。

なぜモノではなく人を見て買うのかといえば、共感を得たいからです。今までは同じ商品を買うことで共感を得ていた時代でしたが、今は体験を通して共感を買うという時代になっているのだと言えるのだろうと思います。

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