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『嫌われる勇気』要約。アドラーは人間関係に疲れたら学べ

人は誰でも変わりたいと思っています。でも変われない、と諦めてしまうことも多いです。それは自分の性格のせいかもしれないし、過去に起こった出来事のせいかもしれないし、もともと不幸な星の下に生まれたからかもしれない。しかし、心理学者のアドラーはこう言います、「人は変われる。誰でも幸せになれる。」

欧米では、フロイト、ユングと並んで有名な心理学者であるアドラー。日本ではあまり知られていませんでしたが、2013年にこの本が出てから一躍脚光を浴びることになりました。

本書は2人の登場人物の対話形式で進んでいきます。1人は「アドラー心理学を学んで満足な人生を歩んでいる哲人」であり、もう1人は「みんな嫌い、自分のことはもっと嫌い!な青年」。哲学者が青年に教えを教授する形を通して、アドラー心理学が紹介されていきます。

変われないのではなく、変わらない決心をしている

青年の主張はこうです。

人は変わることはできない。
なぜなら、変われない人が実際にたくさんいるからだ。たとえば、引きこもりの人は外に出たいと思っているが、難しいではないか。それは過去につらい出来事があったからかもしれない。
私も、小さなころから親にダメな人間扱いをされ続けて、こんな性格になってしまった。明るい性格になりたいとは思うが、それは今さら無理な話だ。

 

青年の主張に対して、哲人は答えます。

それは「変われない」のではなく、「変わりたくない」のだ。あなたは自分で「変わらない」という決心をしている。

なんのために?その方が楽だからだ。変わろうとする時には勇気が試される。そうした「変わることへの不安」と「変わらないことの不満」を比べた時に、あなたは後者を選んでいる。いま享受している楽しみ ーたとえば遊びや趣味の時間ー を犠牲にしてまで変わろうとするより、多少の不満や不自由があっても、今のままでいた方が楽なのだ。

つまり、「変われないのは過去のせい」ではなく、「変わりたくない言い訳を過去のせいにしている」ということだ。引きこもりの人が感じている外の世界への恐怖も、不幸な自分が感じている劣等感も、「変わらない」という目的のために捏造されたものだ。

恐怖も、劣等感も、また怒りも、それがあたかもコントロール不能な感情のように思われるがそうではない。本人の目的を達成するために利用しているだけだ。現に、口げんかの最中に電話が鳴ったら、誰でも冷静な声で応対するではないか。感情は出し入れが可能である。

フロイトやユングは「過去の原因」から人の心理を研究したが、アドラーは「現在の目的」に目を向けた。この考え方によれば、今現在のあなたの生き方は、あなたの過去に左右されているのではなく、あなたの目的に沿っているということだ。

そして、これまでの人生に何があったとしても、今後の人生をどう生きるかについてはなんの影響もない。

なぜなら、身の回りに起こる出来事も、捉え方次第だからだ。

たとえば、背が低いことをデメリットとして捉える人もいれば、それを活かす人もいる。大事なのは、身長が高いか低いかではなくて、身長についてどのような意味づけをするか、だ。

こうしたアドラー心理学は、「何をもらえるか?」という「所有の心理」と比較して「どう使うか?」に焦点を当てた「使用の心理学」と呼ばれる。

過去の出来事にどのような意味づけをほどこすか。これは「いまのあなた」に与えられた課題である。

すべての悩みは対人関係

アドラーの話に感心しつつも、青年は反論します。

見事な理論だが、果たして自分が不幸になることを目的にして何が得だろうか。 実際、私は過去、いつも兄と比較されてきた。兄は何でもできる人だったので、私がどんなに人に認められようと頑張っても叶わなかった。 そのうち、自分が嫌いになった。これが過去と関係ないと、どうして言えるだろうか。

 

哲人は答えます。

過去に起こった事実は変えようがないが、どう受け止めるかは今からでも変えることができる。あなたにはそこに立ち向かう勇気がないのだ。

人が「自分のことを好きになれない」というとき、その目的は「他者との関係の中で傷つかないこと」である。

その人は「自分を好きにならないでおこう」と決心している。そうしておけば、人と関わらずにすむし、人に拒絶されたときにも短所だらけの自分を言い訳にできる。

アドラーは「すべての悩みは対人関係からくる」と主張する。一人で生きている人はいない。世界で一人だけであるなら悩みがあることすらわからないだろう。他者と関わろうとするときに、その勇気が挫かれて悩みとなるのだ。

悩みを解決するためには、他人を味方だと考えなければならない。他人を競争相手として捉えているあいだは、勝者と敗者が生まれ、劣等感を感じる可能性があり、傷つくことを避けるために言い訳をするようになる。

「劣等感」という概念をはじめて使ったのはアドラーだった。ただし、使い方が私たちとは異なる。劣等感はもともと、「自分の目標に対して現状足りてない」という感覚のことだ。それ自体は向上心につながる、良いものである。

劣等感を言い訳につかうように変質したものが、「劣等コンプレックス」である。これが私たちが普段「劣等感」と呼んでいるものだ。これは、向上する勇気をくじかれた劣等感をいう。「どうせ自分なんて」という心理状態だ。

さらに、劣等コンプレックスにも耐えられない場合、それは「優越コンプレックス」に変質する。簡単にいうと「空いばり」だ。極端なブランド信仰や、自分の不幸を武器にして相手を支配しようとする態度もこれに含まれる。

劣等コンプレックスや優越コンプレックスに陥ってしまうのは、人が社会的な存在として生きていこうとするとき直面せざるをえない対人関係、「人生のタスク」から逃げているからだ。

人生のタスクは、「仕事」「交友」「愛」の3つに分けられ、最も難しいのは「愛」である。本当の愛とは、「その人といるととても自由に振る舞える、きわめて自然な状態でいられる」ということだ。

こうした人生のタスクに直面する勇気がなく、別の言い訳でごまかしていることを「人生の嘘」という。過去を言い訳にしたり、未来を心配することは「いま、ここ」をどう生きるかには何の関係もない。人生の最大の嘘は、「いま、ここ」を真剣に生きないことだ。

嫌われる勇気

青年は言います。

なるほど、見事に喝破しものだ!
確かに私には勇気がないのかもしれない。
しかし、ただ「勇気を出せ」と言われて勇気が出るものではないだろう。こちらはその勇気がなくて困っているのだ。

 

哲人は答えます。

まず、人のために生きることをやめなさい。アドラーは、他人の承認を求めることを否定する。他者の評価ばかり気にしていると、他者の人生を生きることになる。見返りに縛られた人生は不自由を強いる。

他者の視線が気になり、他者からの承認を求めてしまうのは、「課題の分離」ができていないからだ。

「課題の分離」とは、「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他人の課題を明確に分けることだ。

そして、自分の課題には真剣に向き合い、他人の課題には一切踏み込まないことだ。

あらゆる人間関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むことによって引き起こされる。課題の分離ができるだけで、対人関係は激変するだろう。

「誰の課題なのか?」を見分けるのは簡単である。「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」を考えることだ。

たとえば、学生が就職活動をしている。どの会社に入るかは、本人の課題だ。なぜなら、本人がその選択の責任を負うのだから。

その子の親は良い就職口を見つけて欲しいと願って口出しをしがちだが、それは介入であり、他者の課題に土足で踏み込むことだ。

その子は親の顔色をうかがって選択をしてはならない。就職先を選ぶのは自分の課題であり、そこへ他人を踏み込ませてはならない。

課題の分離をし、自分の課題を把握したなら、あなたにできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」それだけだ。

その選択によって他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない。子供が選んだ就職先について親がどう感じるかは、親の課題である。

つまり、他者に嫌われることを怖れるな、ということだ。嫌われる勇気を持ちえたとき、対人関係は一気に軽いものへと変わるだろう。

「自由とは、他者から嫌われることである。」

共同体感覚と貢献感

確かに課題を分離することは有用だろう。
しかし、それはあまりに自分勝手で孤独な考えではないか。
他者から嫌われろだと!?それは他者とのつながりを失うことではないのか。

課題の分離はアドラーの対人関係の入口だ。ゴールは「共同体感覚」を持つことにある。他者を仲間だと見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを、共同体感覚という。いつも共同体感覚を持つことを目的としなさい。

共同体感覚を持つためには、「自己への執着」を「他者への関心」に変えることだ。自分のことばかり考えるのではなく、「わたしはこの人になにを与えられるか?」を考えて、自ら働きかけることだ。それは先ほどの「人生のタスク」に立ち向かうことでもある。

多くの人が、自分の課題を前に踏みとどまっている。それは能力の有無では無く、自分の課題に立ち向かう勇気が挫かれているから、と考えるのがアドラー心理学である。

であれば、「何を与えられるか?」の答えは、一歩を踏み出すための「勇気づけ」である。

では、どういう時に人は一歩を踏み出す勇気を持てるのか。人は、「自分には価値がある」と思えたときにだけ勇気がもてる。

それでは、どういうときに価値があると感じられるだろうか。それは、感謝の言葉を聞いたときだ。感謝の言葉を聞いたとき、人は自らが他者に貢献できたことを知り、自分の価値を感じることが出来る。

気をつけなくてはならないのは、誉めても叱ってもいけないということだ。誉める、叱るという「評価」は、上の立場から下の立場に向けてされるもので、相手を下と見なす行為だ。相手は自信を損なってしまう。縦の関係では無く、横の関係で与え、相手が自ら自分の価値に気がつかせることだ。

人は「この人に何かを与えられる」という「貢献感」を得られることこそが幸せなのである。

それは人の目をうかがって承認を求めるのとは違い、自ら進んで与えに行く姿勢である。そこに相手の承認はいらない。

私たちは、自由に何をしても良い。人に嫌われようがかまわない。「他者貢献」という一つの導きの星さえ見逃さなければ。

アドラーの「人生のタスク」における目標

●行動面の目標
1.自立すること
2.社会と調和して暮らせること

●この行動を支える心理面の目標
1.わたしには能力がある、という意識
2.人々はわたしの仲間である、という意識

読書は一回15分までが最適。収入や学歴に影響するといわれる読者を効率的にこなそう

文化庁「国語に関する世論調査」(2013年度)によると、「1ヶ月に大体何冊くらい本を読んでいるか」という問いに対しての回答は以下のようになった。

0冊     47.5%
一、二冊  34.5%
三、四冊  10.9%
五、六冊  3.4%
七冊以上 3.6%
この回答結果から分かることは、「七冊以上読めば、上位4%以内に入れる。」ということだ。「読書量と年収は比例する」「読書量と学力は関係がある」と言われるものの、ほとんどの人が本を読んでいない。
 
でも、良質な情報を得ようとしても本を読む時間がない人も多い。そういう時は、スキマ時間の有効活用だ。
 
 

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「めんどくさい」を無くす方法。行動力と人間関係の問題をスッキリさせよう。

感情は「喜怒哀楽」だけだろうか。いや、もう一人いる。「めんどくさい」だ。あまり一緒にいたくないのに、最も付き合う時間の長いメンドクサイ氏。「めんどくさい」を無くして行動するためには、やる気も、努力も、根性も必要ない。しつこい彼とスッキリ別れるためには、ちょっとしたコツが必要だ。

 

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声がキレイになるだけでコミュニケーションがスムーズになる

僕は今まで、「声が聞き取りづらい」と何回言われたかわからない。
 
一番思い出深いのは、昔、数人が集まって旅行の計画を立てていたときのことだ。僕がある提案をしたんだけど、却下された。しばらくして、友人が同じ提案をした。採用された。
 
びっくりして、「え、さっきそれ俺が言うたやん」て憤然と抗議したけれど、後で冷静に考えてみたら、僕は伝え方がまずかった。そして友人は伝え方がうまかったのだ。せっかくのいい提案も、伝え方のせいで面白くもなり、つまらなくもなる。
 

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雑談力。会話をうまく運ぶ戦略と禁じ手。

雑談は、あらゆる人間関係の入り口だ。相手と親しくなるにしても、ビジネスの話をするにしても、何か大事な打ち明け話をするにしても、いきなり本題から入ってうまくいくことは少ない。むしろ、本題に入る前の雑談で、相手の自分に対する「好きか嫌いか」「信頼できるかできないか」「能力があるかないか」といった評価が決まり、その後の関係に大きく響いてくる。

 

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自分のやりたいことがわからないときは、まず人生のクローゼットを整理しよう

誰もが何かを売り込んでいる時代、「自分で選ぶ」力が必要になっています。

成果を出すためには、99%の無駄を捨て1%に集中する必要があります。

つまり、本当に大事なものとそうでないものとを見極め、必要ないものは捨てるということです。

部屋のクローゼットを整理するように、人生のクローゼットも整理する必要があります。

本当にやりたいことを見つける

現代は「欲張りの時代」。欲しいものはなんでも揃っているし、退屈な時にはスマホを開けばいつでも自分の欲しい情報にアクセスすることができます。選択肢が多い時代ともいえるし、その選択肢のそれぞれが「うちが一番!」「大人気!」「今だけ!」と叫んでいる「他人の意見がうるさい」時代でもあります。

みんなが叫んでいることを聞いていると、心がザワザワとしてきて「どれも大事だ」と思うし、「全部やらなきゃもったいない」「頑張れば全部できそうだ」などと焦ったりします。

そうして全部に取り組んでみるものの、どれも中途半端にしかできなくて、後で「なんか振り回されてばかりで、なんにも残りませんでした(*≧艸≦)」と総括することになります。

将来的に実をのこすためには、本当にやりたいことを見極めて、そこに集中する必要があります。惰性で流されるのではなく、「自分で選ぶ力」を身につけるのだ。

いろんなことをいっぺんにやっても結果が出ないのは、力が分散しているからです。右にも左にも進もうとしたら、結局どちらにも進みません。進む方向を一つに絞れば、同じ力でたくさん進むことができます。

力の分散と集中

人生のクローゼットを片付ける

自分のやりたいことを見つけ、さらにそれを諦めないためには、まずはあらゆる選択肢を評価する必要があります。

次に不要なものを捨てなければなりません。そして、その状態をキープしつづけなければなりません。

  • 評価する
  • 捨てる
  • キープする
  • これはクローゼットの片付けと同じで、つまり中にあるものを広げて「いるか」「いらないか」を評価し、いらないものを捨て、綺麗な状態を保っておくということです。

    1.評価する

    クローゼットに詰まっているたくさんの服を評価する基準は、「大好きか?」です。『人生がときめく片付けの魔法』の著者、近藤麻理恵さんは、クローゼットの棚卸をする際には「ときめくか?が重要」だと言いました。

    部屋のクローゼットも、人生のクローゼットも、片付けのポイントは同じだということです。「いつか着るだろう。いつか使うだろう。」というものをとっておいてはいけません。

    そしてもう2つ、基準を設けます。「向いているか」と「人の役に立つか」です。

    選択の基準

  • 「大好きか」
  • 「向いているか」
  • 「人の役に立つか」
  • たとえば私の場合、「文章を書く」ということを優先してやりたいことだと考えています。なぜなら「書くことが好き」だし、「文章を書くことに向いている」し、「ある程度人の役に立っている、かもしれない」からです。

    こんなふうに、自分が何を選択するべきかを評価していきます。評価するには、考える時間が必要です。なんの情報にも触れない、自分一人で静かに考える時間を日常的に持つと良いです。できれば朝一番に。

    朝は、頭にまだ余計なものが入っていないからです。そうしてみてわかる、実はほとんどのものは「ノイズ」であって価値がない、生産的ではないと。

    評価するときに気をつけなければならないことがある。心理学で「サンクコストバイアス」というものと、「授かり効果」と呼ばれるものです。

    「サンクコストバイアス」は、すでにお金や時間を投資してるから、という理由でなかなか手放せない心理状態のことをいいます。

    代表的なのは、投資の「塩漬け」です。一度お金を投資してしまうと、たとえそれが損失を生んだとしてもなかなか手放すことができず、ズルズルと持ち続ける。この状態を「塩漬け」といって、投資をやったことのある人なら誰もがこの心理に悩まされます。

    「授かり効果」もこれと似ていて、すでに持っているものの評価を高めに設定してしまう心理が、人間にはあります。

    こうした心理を乗り越えて、上手に手放すためには、自問してみることです。「これを持っていないとしたら、私は喜んで買うだろうか?」

    2.捨てる

    評価ができたら、次は捨てることです。クローゼットの中身なら容赦なくゴミ箱に入れれば良いですが、人からの頼みごとや、気のすすまない付き合いなどは断るのは難しいですね。

    「ノー」を言うことが難しい理由は2つあります。

    1.本質的なものが見つかっていないから。

    自分が何を大切にするのか明確にしない限り、いろんな選択肢の葛藤に悩まされる、ということがこれからの時代いつまでも付いて回ります。

    本質的なものの探し方は、「1.評価する」のところに書いたとおりです。

    2.他人にどう思われるか心配

    本書では「ノー」も伝え方次第で、むしろ相手との関係性が良好になるといいます。テクニックがいくつか掲載されていたのでご紹介すると、

    1.判断を関係性から切り離す

    断りはするけどあなたが嫌いなわけではない、ということを示します。

    2.直接的に言わない

    「ノー」ではなく「別の用事がある」などと間接的に言うようにします。

    3.自分が何を失うのかを明言する

    何かを手に入れるということは何かを失うということでもあります。こうした考えを「トレードオフ」といいます。

    選択するときはトレードオフを常に意識することが大事です。人生はいつも、「あれもこれも」ではなく「あれかこれか」です。

    何かを切ることはつらいけど、そうすることでもっと良いものを手に入れることができます。何かを頼まれたとき、「それをやるとこれができなくなります」と言うことで断ることができます。

    4.自分を安売りしない

    キッパリと言うことで相手の敬意を得られることもある。

    5.すぐに返事をしない。

    イエスを言うのをもっと遅く、ノーを言うのをもっと早くしようという話だ。日を改めると冷静な判断がしやすいです。

    6.代替案を出す

    「今日は無理ですが、来週なら」という代案を出す方法です。

    7.冗談めかして断る

    仲のいい相手なら、笑いながら「わりいwww」で済むこともあります。

    「ノー」を言う機会はとても多いです。現代ではみんなが常に、何かを売り込んでいます。本書では、「エッセンシャル思考を実践することはノーを言い続ける生活をすることだ」とも言っています。

    おわりに

    「どれも大事だ」「やらなきゃ」という考えを捨てて、「より少なく、より良く」がこの本の要旨です。

    これは日本人的な考えではないかなあと私は思いました。

    イメージとしては「茶道」。不要なものを一切排除して、でも、こだわりがある。てことを考えると、自分の国のことをちゃんと知っていれば、アメリカ人が書いたこの本を読まなくても良かったんじゃないのか?と今さらながら思ってしまいます。日本はアメリカナイズされすぎてるのかもしれないですね。

    『伝え方が9割』まとめ。相手に「OK」をもらう誘い方。

    「話がうまい人には特別な才能があるのだ。私が口下手なのは才能がないからだ。」と思うのは間違いです。実際は、伝え方にはシンプルな技術があって、誰にでも習得できます。

    話のうまさは一部の人しかもっていないセンスではなく、誰でも学ぶことで上達するスキルだ。自分の意見をそのまま伝えると相手に「ノー」としか言われないことも、伝え方次第で「イエス」に変えることができる。

    というのが、ベストセラーのこの本です。

    まとめました。

    3つの原則

    自分の言いたいことを相手に上手に伝えるためには、次の3つの段階を踏まえることが大原則です。

    1.思っていることをそのまま口にしない

    たとえば子どもに言うことを聞いて欲しい時、そのまま「言うことを聞きなさい!」と言ってしまっては、当然相手の反応は「ノー」になってしまいます。

    2.相手の頭の中を想像する

    相手は何が好きか?何が嫌いか?どんな性格か?などを把握します。

    3.自分の伝えたいことと、相手のメリットが一致するお願いを作る

    たとえば子どもを病院に連れていかなければならないとき、「さあ!お医者さんでマズイ薬をもらって、さっさと治そうよ!」なんて直接的に言ったら当然嫌がられるわけで、そうではなくて、相手の好きなものを考えます。

    もし子どもが遊ぶ元気もなくなっていたとしたら、「お医者さんでお風邪を治してみんなとまた遊ぼうね。」と言えば病院に連れて行きやすい、というわけです。

    実際、私は子どものころ、近所の病院にトランポリンがあって、それで遊ぶことが病院に行く楽しみの一つでもありました。具合が悪いのに無理して跳ねていた記憶があります。

    なぜならトランポリンはその病院にしかなく、そのときに跳ねておかないと次に病気になるまで跳ねることができないからです。人間というのは、楽しみのためならどんなリスクも厭わない生き物なのだ!

    さて、お願いはいつも、自分と相手の合作でなければならないといいます。自分のお願いと相手のメリットが一致するとき、はじめて「イエス!」と言ってもらうことができます。答えは相手の中にあります。

    7つの切り口

    こうした言い回しは、たまたま思いつくものではありません。意図して作ることができるものです。本書では7つのテクニックを紹介しています。

    1.相手の好きなことで誘う

    先ほどの「お風邪を治して遊ぼう。」が一つの例です。

    2.嫌なものを回避したい気持ちを使う

    それをしないと損をしますよ、という気持ちを起こさせます。「早く風邪を治さないと、大好きなハンバーグが食べられなくなっちゃうよ」といった使い方です。

    3.選択の自由を与える

    好きなものを2つ並べて選ばせる方法です。

    人は「決断」は苦手ですが「比較」は好きです。

    つまり「病院に行くよ!」と相手の決断を迫るより、「クマさんのぬいぐるみがある病院か、ネコさんの本がある病院、どっちにしようか?」と比較をしてもらう方が相手の了承を得やすいと言うのです。

    4.認められたい欲求に訴える

    人は認められると嬉しいです。

    「頑張ってちゃんと病院に行ったら偉いなー」と言って、寝てる子を起こす方法。

    5.あなた限定

    相手が寂しがりだったり、自分が好きな場合に効果を発揮します。やっぱり人は「限定」に弱いです。

    6.チームワーク化

    「いっしょにやろう。」と言うことです。相手がめんどくさがっていたり、すぐやる必要がないと思っている場合に効果的です。

    7.「ありがとう」を言ってしまう

    先に「ありがとう」を言われると断りづらい、ちょっと大人の作法です。駅のトイレには「いつもキレイに使っていただき、ありがとうございます。」と書かれているのをよく見かけますね。

    言葉を強くする8つの方法

    ここまでが、上手にお願いするための切り口です。

    本書ではさらに、「強い言葉の作り方」が紹介されます。

    おいしい料理にレシピがあるように、相手を感動させる言葉、動かす言葉にもレシピがあります。

    感動的な言葉を紡げるのはもともとの才能ではなく、技術だといいます。

    具体的には、「言葉に高低をつける」ということです。

    高低差にエネルギーが生じて、それが言葉の強さになります。

    一番わかりやすいたとえは漫才ですね。くだらない「ボケ」と真面目な「ツッコミ」。

    この二人の会話には高低差があって、くだらなさと真面目さの掛け合いは、話を聞いている観客を上げたり下げたり、まるでジェットコースターに乗ったかのような楽しさを味わわせます。

    もしこれがボケだけで、またはツッコミだけで延々とくだらないことをやっていたらつまらないと思います。

    なぜつまらないかというと、話に抑揚がないからです。

    言葉に抑揚を付ける方法を、本書では8つ紹介しています。

    1.サプライズ法

    JRの広告「そうだ、京都行こう」が有名です。単純に「京都行こう」と言うだけでは平凡ですが、サプライズキーワードの「そうだ」で一回上げてから「京都行こう」と落とすことで高低差を付けます。

    レシピ

    ①伝えたい言葉を決める
    ②サプライズキーワードをくっつける

    2.ギャップ法

    正反対の言葉をくっつける方法。

    たとえば「誰が敵になろうとも、私だけは味方だ。」は、ただ「私は味方だ」と言うより強い印象を与えます。

    レシピ

    ①伝えたい言葉を決める
    ②正反対のキーワードを決める
    ③2つの言葉が繋がるように言葉を埋める

    言葉ではないですが、漫画や映画がこのギャップを多用しています。「強大な悪に立ち向かう少年たち」はよくある設定ですね。

    「美女と野獣」「のび太とドラえもん」といった正反対のキャラを組み合わせてギャップを利かせた作品は、探せばいくらでも出てくるし、人気作品ほどこの傾向が強いです。昔の作品を見ても、「熱血の金八先生とやる気のない不良生徒」「フーテンの寅さんと才色兼備のマドンナ」「勇敢な七人の侍と卑屈な百姓たち」など、時代を超えて使われている普遍的な方法だとも見ることができます。

    3.赤裸々法

    詩や小説のように、言葉に体温を持たせる方法。

    レシピ

    ①伝えたい言葉を決める
    ②その言葉に対して起こる体の反応を赤裸々に描写する

    本書では、西野カナの「会いたくて会いたくて震える」という歌詞を例に挙げています。「会いたい」と思った時の体の反応を赤裸々に描くことで有名になったフレーズです。

    「会いたい」時の体の反応は様々で「顔が赤くなる」「のどがカラカラになる」「緊張する」「頭が真っ白になる」などがありますが、その中で一番ハマるものをくっつけるのだといいます。

    このように、詩や小説も才能ではなく技術なのだといいます。「西」つながりで思い出しましたが、小説家の西加奈子さんは、「小説は、ニュースの取りこぼす内容を書くことだ」と言いました。

    ニュースは感情を排除して事実を淡々と述べるだけですが、そこに含まれる心理を描写したら、言葉に深みが出て、読者に何かしら思い入れを残す、小説が出来ます。

    4.リピート法

    伝えたい言葉を繰り返すことで強調する方法。

    レシピ

    ①伝えたい言葉を決める
    ②繰り返す

    「今日は暑い」と言うより「今日は暑い、暑い。」と重ねた方がぐっと暑さが伝わるといいます。

    確かに、暑い日にひたすら「あー、あっちー!今日あっちーな!まじ暑いわ!」と繰り返す人がいるけど、あれを聞いているとこっちまで暑くなってきますね。

    5.クライマックス法

    サプライズ法に似ていますが、クライマックスキーワードというものを付けることで聞き手の注意を引く方法です。

    人の集中力は15分と言われていて、話をしている途中で聞き手の注意が散漫になることがあります。

    そういう時、クライマックスキーワードの「ここだけは聞いて欲しいのですが」とか「ポイントが3つあります」などを付けることで注意喚起をする方法です。

    レシピ

    ①伝えたい言葉を決める
    ②クライマックスキーワードを前に付ける

    6.ナンバー法

    「ひとつぶ300メートル」「101匹わんちゃん」「3本の矢」「7不思議」など、広告やタイトル、政策の多くに数字が入っているのはインパクトを増すためです。

    数字には、人の印象に残りやすいという性質があります。

    さらに、偶数より奇数の法がエッジが聞いて印象に残るらしい。確かに「3本の矢」を「2本の矢」にしてしまうとなぜか微妙です。

    レシピ

    ①伝えたい言葉を決める
    ②伝えたい言葉を数字に変える

    7.合体法

    世の中の新しい言葉のほとんどは、二つの言葉を合体させてできるのだといいます。

    「ゆるい」と「キャラクター」を合体させて「ゆるキャラ」、「妖怪」と「ウォッチ」を合体させて「妖怪ウォッチ」。単体では当たり前の言葉を、合体させることで新しい言葉に変える方法です。

    レシピ

    ①軸言葉を決める。例:「男子」
    ②別軸の言葉をいくつか挙げる。例:「控えめな」「大人しい」「草食系」「おっとりした」
    ③二つの言葉を繋げる。例「草食系男子」

    二つを合わせて別の新しいものを作る。これは言葉だけでなく全ての新しいものがそうしてできているようです。男と女が合わさって子どもができるしね。そう考えると哲学的ですね。

    8.頂上法

    トップであることを強調します。

    なにも世界一である必要はありません。街で「地域ナンバー1!」という広告をよく見かけるように、世界→国→県→地元と見て行った時にどこかしらナンバーワンになれる場所があるので、そこを強調します。

    洗剤の「トップ」はなにで一番なのかはわからないが、たしかに頭に残る商品名だと思います。他にも「一番搾り」「世界一受けたい授業」もあえて「頂上」を強調することで印象付けている。これらの例でわかるように、頂上であるとする根拠は何でもいいんだと思う。

    レシピ

    ①伝えたい言葉を決める
    ②適した頂上キーワードを入れる

    おわりに

    個人的にも気づきが多い本で、備忘録も兼ねてまとめたら長くなりました。

    この本の要旨は、「自分の手で、言葉を生み出そう」ということです。この本の内容を発展させていくと、マーケティングやコピーライティングの話になっていくのだと思います。

    シリーズいくつ出しとんねん。